有機栽培であるだけでなく、森林農法(アグロフォレストリー)に取り組んでいるのが、エクアドルのインタグコーヒー生産者協会と、メキシコのトセパン協同組合です。
森林農法で安定した暮らし
コーヒー栽培は大規模な農場でコーヒーだけが栽培されるプランテーションで行われることが多いですが、たくさんのコーヒーを能率よく栽培することができる反面、天候不順などで、コーヒーが不作になった時、生産者は自給用の作物や他の換金作物が無いために、生活が不安定になりがちです。
森林農法のコーヒー園では、コーヒーだけではなくいろいろな木が植えられています。背の高い木・低い木、草などに交って、コーヒーの木も育っています。
様々な種類の木がある森の中では、コーヒーが分散していて作業に手間がかかる一方、生産者の暮らしを支える面もあります。
(出典:パトリシア・モゲル氏の発表資料より)
たくさんの種類の木があることで、森から、食料、薬、木材、飼料、燃料、樹脂など多くの種類の恵みを得ることができます。
オールスパイスなどの背の高い木は、直射日光が苦手なコーヒーの木に日陰をつくってくれます。バナナの落ち葉は、土に返ることで肥料となります。
コーヒーの収穫が不安定な時も、森林農法のコーヒー園は他の作物を自家消費や販売用として提供してくれるのです。
このようなコーヒー栽培で生活を支えることで、生産者は安定して暮らしていくことができます。
(出典:パトリシア・モゲル氏の発表資料より)
高木から低木まで
いろいろな樹が育つ農園
コーヒーの実の収穫は
大変な作業
森林農法のさまざまな収穫が
生活を支えています
持続可能な森づくり
多様な木や草花などの植物が生き、森をすみかにする動物や鳥類が活き活きと暮らしている状態を「生物多様性が豊か」と言います。
森林農法の森には数十種類から数百種類の鳥類が見られ、コーヒーだけの単一栽培においては、数種類の鳥類しか見られません。
生物多様性が豊かな場所には、害虫と共に天敵となる別の虫がいて、病原菌にも拮抗する別の菌が存在しています。結果として、害虫や病気の菌だけという偏った環境になりにくく、全体のバランスがとれることで、木自体も健康になり、農薬や化学肥料を使用せずに有機栽培をすることができるのです。
中南米にコーヒーが持ち込まれる前から、先住民の伝統文化の一つとして森林農法が営まれていました。
地球温暖化防止や生物多様性の保護の観点からも、今改めて注目されています。